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「PUBLICing」プロジェクト
長谷川一/平成14〜16年度科学研究費補助金基盤研究(B)(2)研究成果報告書/2005年

メディアに媒介されたコミュニケーションをデザインするための試みとして
1.メタ・プロジェクトとしてのPUBLICing──はじめに

 PUBLICingプロジェクトは、東京大学情報学環メルプロジェクトの数あるサブおよび関連プロジェクト群のなかでも特異な位置づけを有している。

なぜなら、このプロジェクトは、たとえばテレビやミュージアムや本や携帯電話などといったような具体的なレベルで固有な研究対象を設定しておらず、メディア・リテラシーやメディア論にかかわるさまざまなプロジェクトのプロデュースにかかわっていく、いわばメタ・プロジェクトという特徴をもつからだ。
 まずはその成り立ちについてふり返ることから始めたい。

2.PUBLICingの系譜その1──「コミュニティ・パブリシング」
 
 本プロジェクトの直接的な先行プロジェクトとして、「リキエスタ・プラス」プロジェクトがあげられる。
 「リキエスタ・プラス」は、オンデマンド出版の技術を利用した小部数出版の新しい可能性を検討した試みであった。オンデマンド技術による小部数出版については、すでに1990年代から出版産業内部でも多くの議論がなされ、さまざまな試みがなされてきた。しかし、マス化した出版産業のなかで相対的に疎外されつつあった人文書の出版の復権に利用する、といったタイプの言説の跋扈からもわかるように、そのほとんどは、出版産業内部の力学を前提にした、いわば業界に内向したドメスティックな議論に終始していたということができる。結果、オンデマンド出版技術はもっぱら、趣味性の高い出版物や、販売見込みのたてにくい復刊物などといった類の、低コスト・低リスク・低収益の小部数出版への利用という、メディア論的想像力のもっとも貧困な形でつかわれていた。早い話、出版のマス化へのアンチテーゼというよりも、マスがとりこぼした隙間を埋める以上のものではなく、技術だけが先行するばかりで、その社会的文化的な理念も示せなければ、積極的な活用法も見出すことができていなかったのである。

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