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メディア・リテラシーをめぐる協働活動へ向けての東京宣言(試案)
水越伸/メルプロジェクト・シンポジウム2006/2006.3.5

メルプロジェクト・シンポジウム2006
「東アジアにおけるメディア・リテラシーをめぐる協働活動へ向けての東京宣言」
(東京宣言)試案

水越伸

まえがき

 以下の短い文章は、2006年3月4日(土)から5日(日)の二日間、東京大学本郷キャンパス法文2号館において、約250名の参加者を集めて開催されたメルプロジェクト・シンポジウム2006「メディア表現、学びとリテラシー:メルプロジェクトの播種(はしゅ)」において提言された、東アジアにおけるメディア・リテラシーに関する宣言文の試案である。

 メルプロジェクト(Media Expression, Learning and Literacy Project)は、市民のメディア表現、学びとリテラシーに関する実践的な研究グループで、全国各地の研究者、大学院生、放送を関係とするマスメディア関係者、学校の先生方やNPOや市民団体の人々など、多種多様な人々が約八○名が、東京大学大学院情報学環に拠点をおきながら活動を展開してきた。このゆるやかなギルド的なネットワーク型組織においては、放送や新聞、本といったマスメディアからインターネットやケータイまで幅広いメディアについて、メディア・リテラシーだけではなく、メディア・アートに近いような遊びから、市民のメディア表現を育成する実践活動までをゆるやかに結びつけながら活動をおこなってきた。
 そのメルプロジェクトは、2000年の大学院情報学環の立ち上がりとともに、山内祐平、水越伸を中心に構想され、2001年1月の最初のシンポジウムで正式にスタートした。そして当初から予定されていた5年の歳月を経て、06年のこのシンポジウムで幕を閉じた。いうまでもなくこうした試みがすべて終わるわけではなく、メルを苗床にしたさまざまな活動が全国各地で、あるいは東アジアと北欧でもすでに展開されつつある。また大学院情報学環においても、メルプロジェクトの思想や方法論を受け継いだ、新たな社会連携型のプロジェクトや組織が、ごく近い将来にはじめられる予定である。
 メルプロジェクトの5年間の活動のなかで、山内や水越をはじめとするメンバーが図らずも遭遇したのは、世界各地、分けても韓国、台湾といった東アジアの国や地域で進められていたメディア・リテラシー活動の数々やそれを展開していた研究者、実務家などであった。その中から見えてきたことは、21世紀初頭の新たなメディアの生態系のなかで、イギリスやカナダから出発した伝統的なメディア・リテラシーの思想を再検討し、東アジアの社会文化状況のなかで吟味をし、新たなメディア・リテラシーの思想と認識枠組み、方法論を、たがいに連携しながら探求していくことの必要性であった。
 そうした国や地域を越えた連携が、ひいては日本という国のなかにおけるメディア・リテラシーの今後の展開をより有効のものへと導いていくと考えたのである。とくに近年、グローバリズムの反動、長引く経済不況とさまざまな格差の拡大傾向、デジタル・メディアの混沌などといったことがらが相まって、日本社会を覆うメディアをめぐる言説や諸実践に保守化の傾向が顕著に見受けられる。その傾向は、メディア・リテラシーという営みを保護主義的な活動へと矮小化してしまいかねない危険性を帯びている。
 こうした保守的、保護主義的な傾向への警告を発しつつ、私たちはメルプロジェクトのフィナーレとなる舞台において、東アジアにおける新しいメディア・リテラシーのありようを導き出すパースペクティブを提示することにしたのである。

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