[ホーム] > [Text] > [レポート] > [「Media Bazaar!」 mell シンポジウム2004]

<< 前へ | 「Media Bazaar!」 mell シンポジウム2004 | 次へ >>


「Media Bazaar!」 mell シンポジウム2004
土屋祐子/2004.3

メルプロジェクト・シンポジウム2004:メルプロジェクトの波延
「Media Bazaar!(メディア表現、リテラシーをめぐる型破りな知的交流ワークショップ)」

上田信行、ペク・ソンス、長谷川一、伊藤昌亮、境真理子、佐倉統、松井貴子、水越伸ほかPUBLICingメンバー主宰

 「メディア・バザール」は、メディアの「流通」システムに着目し、「パブリック」の未来のあり方を考える実践的で実験的なワークショップである。「バザール経済」をメタファーに、オルタナティブなメディア活動をつなぐ新たなコミュニケーションの場を創り出す試みだ。
repo_05-7.jpg

当日は、バザールの本場ウィグル出身のレイハン・パタール(甲南女子大学・客員助教授)さんも招かれ、シンポジウム会場はバザールへと様変わりした。メディア・リテラシー教材や授業案、出版物、イベント企画など、多様なメディア作品を持ち込んだ26の出店者(「バザーリ」・売り手)が、シンポジウム参加者(買い手)を相手にバザール商人よろしく商談に興じた。プレゼン用のツール「モバザールスーツ」を身につけた出店者たちは、ウィグルの民族衣装やカラフルなシール、お面で扮装し、呼び込みに声をからした。バザールの雑踏と喧騒が再現され、会場を異様な熱気が包む中で、次々と商談成立を知らせるベルが鳴り響いた。

 バザーリからの成果発表がなされた後、メディア・バザールの仕掛け人でMELL関連プロジェクト「PUBLICing」グループの長谷川一、伊藤昌亮(東京大学博士課程)の両氏から、それぞれ「バザール経済とは何か?」、「なぜバザールなのか?」という問いに答える形で、ワークショップの「種明かし」が行われた。

 ●種明かし1 「バザール経済とは何か?」

 伊藤は、流通システムを「産業経済」「未開経済」「バザール経済」という3つの経済モデルにあてはめ、それぞれにおける送り手と受け手の関係と、両者を媒介する情報の性質について考察した。

(1)「産業経済」モデルでは、送り手と受け手のあいだに「生産—消費」という関係が成り立ち、固定価格に基づく取引が行われる。そこでは広告・宣伝を通じて規格化された、量的に豊かな情報からブランドという価値が生み出され、その価値をめぐって送り手どうしの競合関係、すなわち企業間の競争がくりひろげられる。

repo_05-3.jpg
商談成立!=撮影・張麗華さん

repo_05-6.jpg
「どうっすか?」=撮影・押切ゆいさん

repo_05-2.jpg
大繁盛です=撮影・押切ゆいさん

repo_05-1.jpg
「えぇっ!」 「キレイでしょ」※バザールに現れた謎のガイド(客引き役)に驚く参加者=撮影・劉雪雁さん

repo_05-4.jpg
「僕もガイドになりました」=撮影・張麗華さん

repo_05-5.jpg
バザーリ、集合! 成果はいかに?=撮影・張麗華さん

(2)「未開経済」モデルでは、送り手と受け手のあいだに「贈与—互酬」という関係が成り立ち、価格不在の取引が行われる。そこでは儀式・儀礼に従ってドラマ化された、質的に豊かな情報から権威という価値が生み出され、その価値にのっとって送り手と受け手の信用関係、ひいては共同体の秩序がかたちづくられる。

(3)一方「バザール経済」モデルでは、売り手と買い手の交渉による言い値対言い値のぶつかり合いから、変動価格に基づく取引が行われる。そこでは送り手と受け手のあいだに競合関係が発生する。情報はときに隠匿・歪曲され、量的にも質的にも貧しいものに、しかしそれゆえきわめて価値あるものとなる。そのため情報回路としてのバザールは、情報がスムーズに流れないようあえて複雑に、また正しく伝わらないよう喧騒に満ちて構成されている。

 そのなかで取引を有利にはこぶためには、他者の情報を探り、自分の情報を守るための情報探索技術が必須となる。バザールにおける情報探索は、均質な商品の全体分布を把握することではなく、各商品の異質性を臨床的に探査することである。

 そこでは選択肢から選ぶことではなく、選択肢を見出すことが目的となる。そうした情報探索が行われる場では、したがって規格化された大量生産品よりも、むしろユニークな工芸品やいわくつきの掘り出し物が珍重され、ひいてはそれらの生産が促進されることになる。「バザール経済」という流通システムは、つまりそうした特色ある品々を生み出すための生産システムでもあるのだ。

 ●種明かし2 「なぜバザールなのか?」

 伊藤が提示した経済・流通システムのモデルを受け、長谷川は「バザール経済」をメタファーとした今回の「メディア・バザール」というワークショップのメディア論的な意義について説明した。長谷川によれば、今日の日本社会における諸メディア活動は、「産業経済」的な「マス」と、これに対抗的であると自らを規定する「オルタナティブ」(「産業経済」と「未開経済」の混淆)という両極のあいだに位置づけることができる。「マス」は、公権力に対峙しつつ「世論」を形成することで「公共性」を担保するという古典的な図式の体現者であると自認している。だがそれは、その「マス」性ゆえに制度的・権力的であることと裏腹であり、さらに今日では商業性の卓越によって、世論形成装置という素朴な意味での「公共性」すらも喪失しつつある。

 一方、「オルタナティブ」は草の根的ゲリラ的手法をとり、「マス」において失われた「公共性」の「回復」をめざす。だがその多くは流通・評価システムを十分に形成できていないため外部へひらかれていく回路が不在ないし不明瞭であり、結果としてミニマリズムへと内向する傾向がある。また「オルタナティヴ」には「マス」への対抗が前提として組み込まれているため、「マス」の補強ないし「エクスキューズ」的な「『もうひとつの』制度化」へ陥る恐れが構造的に内包されているという指摘がなされた。

 そのうえで長谷川は、メディアがなんらかの仕方で公共性を媒介するとするならば、メディアの未来を考えることとは公共性の未来を考えることにつながると主張。ところが、このときメディアとして想定されているのは、多くのばあい「マス」と「オルタナティブ」であり、その2項の対立図式である。この隘路を乗り越えるために、第3項の探索がなされなければならない。そのためのひとつのアプリケーションとして、「流通」という次元に注目、第3の経済システムとなされる「バザール経済」のメタファーを用いたメディア空間の創出を試みたのである。「メディア・バザール」という実践が、新たな「パブリック」を構成する場を生み出すための、ひとつの足がかりとなるのではないか、と長谷川は話した。

 ●出店者(バザーリ)一覧
バザーリ 出し物
ソフィア・ウーさん率いる台湾サーカス団 (1)媒体素養に関する教材・教案、(2)サーカス団らしいパフォーマンス
香港代表アリス・リーさん 香港での活動を紹介するテープ
ジョン・ヒョンソンさん率いる韓国代表団その1 メディア教育用教材・実践成果・学生作品・著作アイディアなど
ジョン・ヒョンソンさん率いる韓国代表団その2 メディア教育用教材・実践成果・学生作品・著作アイディアなど
レイハン・パタールさんのお知り合いのウルムチ人家族(リズワンさん) ウルムチ料理の紹介と試食販売
d'CATCH(ペク・ソンス先生・坂田邦子さん・中村豊くん:セッション1) われわれのなかのフィリピンを探そう〜ジョリー君といくフィリピン料理食べ放題ツアー〜
林直哉さん(セッション3) 雑多な怪しい商品いろいろ
唐國宏章さん(セッション3) 静岡県でメディアリテラシーのワークショップを行う権利
酒井俊典くん(セッション3) MTV関係
小川明子さん・北村順生さん(セッション4) アジアの不思議日本版の提携先募集
中村純子さん(川崎市麻生中学) ボーナスはたいてつくったオーストラリア研修報告書の販売
山根かおりさん 情報は金なり、クイズ!ウイグル
内川奈津子さん 美須々丘高校放送部でつくったDVDの予約販売
武蔵美ML(メディア・リテラシー)チーム 魅力☆発見
武蔵美ME(メディア・エクスプレッション)チーム エレガンスな気分売ります
多摩美チームその1 情報デザイン学科デザインコースのPR
多摩美チームその2 情報デザイン学科紹介ウェブサイトのPR
井上雅子先生(江戸川大学) 個人輸入したお茶のオリジナルブレンド指導と試飲
中村雅胤先生(東日本調べ学習研究会) ワークショップ売り込み
奥泉香さん(アニマシオン読書ワークショップ) ワークショップ売り込み
NPO長岡さん NPO関係のお知らせと公募
高島康太さん(音楽家) 音楽と映像のメディアリテラシー学習のソフト
西尾美也さん(東京芸術大学) ふつうではないファッションの紹介・販売・受注
河上進さん(「本とコンピュータ」) 雑誌の販売
篠崎晃一さん(Oval Link) 『樂校』=オンライン・コミュニティでつくった本(みたいなもの)
白石草さん率いるourplanet-tvチーム Shooting on safer SEXのイベントのプレゼンテーション
永井智哉さん(サイエンスノード) 科学の演出活動の紹介・営業
小川直美さん(対話プロジェクト) 詳細未定

(土屋祐子)

レポート一覧

このブログのフィードを取得
[フィードとは]
Powered by
Movable Type