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メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育(前編) mell公開研究会2005.10
河西由美子/2005.11

「メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育:イギリス、カナダ、オーストラリア、台湾の比較文化的検討を通じて」(前編)

朝までそぼ降っていた長雨が明け、この日の午後はさわやかな陽気となりま
した。10月公開研究会は、今春から4回おこなってきた「メルプロジクトの
相貌」シリーズをひと休み。ゲストスピーカーに、9月から約半年間の予定
で吉田秀雄記念事業財団の招聘で東京に滞在中の台湾政治大學媒体素養研究
中心のソフィア・ウーさんをお招きし、「メディアをめぐる知識とメディア
リテラシー教育」をテーマにお話をいただきました。ソフィアさんのメディ
アをめぐるセンス、視点には感嘆の声があがり、インスピレーションに満ち
満ちた会となりました。

2005年10月メルプロジェクト公開研究会 報告

 日 時 2005年10月22日(土)午後2:00〜5:30
 場 所 東京大学本郷キャンパス情報学環アネックス2F会議室
 参加者 約30名
 テーマ 「メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育:
      イギリス、カナダ、オーストラリア、台湾の比較文化的
      検討を通じて」(前編)
        クロスカルチャー:対話がつなぐ、回路を作る」
 登壇者 報告  ソフィア・ウー=呉翠珍(台湾政治大學伝播學院
         媒体素養研究室・吉田秀雄記念事業財団客員研究員)
 通訳・解説   劉雪雁(国際通信経済研究所)
 コメンテーター 水越伸(東京大学大学院情報学環)
 モデレーター  河西由美子(玉川大学)

□ ソフィア・ウー(呉翠珍)さんは、教育工学、メディア教育学などの教
育学領域と、マスメディア論、コミュニケーション論の領域を学際的に結び
つけつつ、台湾におけるメディア・リテラシー教育を精力的に切りひらいて
こられました。米国で学位を取られ、欧米諸国のメディア・リテラシー教育
に通じ、華人社会を縦横に往き来する、多文化的、異種混淆的な知性をお持
ちの方です。2001年度にソフィアさんが初めてメルプロジェクトに関わら
れて以来ずっと通訳兼仲介役を務めてこられた、中国のメディアリテラシー
教育にくわしい劉雪雁さんに、今回も行き届いた通訳および解説をいただき、
コメンテーターは水越伸が務めました。
 この報告では、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの欧米諸国のメディ
ア・リテラシーの現状を踏まえつつ、台湾を中心とする東アジアにおけるそ
れらの特徴やあり方を提示していただくことを想定し、当初は1回完結のお
話を予定しておりました。しかしながら、ソフィアさんのメディア教育に関
する卓越した知識と広い視野、台湾での豊富な実践体験を存分にお話しいた
だくため、前・後編に分割しておこなうことになりました。
 まず、9月から今回の日本滞在を開始されたソフィアさんは、9月から10月
にかけて日本のマスメディアが一斉に「秋」をイメージする色調やモチーフ
によって世間を席巻する「もみじ現象」に着目。それと歩調を合わせるかの
ように、マンションのゴミ捨て場にまで紅葉の飾りをつけた貼り紙が現れる
など、メディアを介して過剰なまでの季節感に囚われていく日本人の様相を、
日本文化の外側からの視点でユーモラスかつクリティカルに切り取りました。
 前編に当たる今回の講義のテーマは、「WHY? なぜメディアを学ぶのか」
「WHAT? メディアについて何を学ぶのか」の2点です。「なぜメディアを
学ぶのか」については、EU地域の"Resolution on Education in Media & New
Technologies"(1989年)で示された「empowering」「liberating 」など
7つの根拠が、台湾においてどう解釈されてきたかを例示・解説されました。
その中には、メディア教育のあり方として、たとえば「ノーテレビデー」と
いった活動はメディアについて学ぶためのプロセスに過ぎず、テレビを生活
の中から排除すること自体が終点なのではない、といった警鐘的なエピソー
ドや、「メディア・リテラシー教育とは外界を自分たちの世界に反映させる
こと」といった指摘も含まれ示唆に富むものでした。
 また1998年から1999年にかけてUNESCOからも「メディア教育を受ける
権利」についての宣言が出され、これを契機にナショナル・カリキュラム
(日本でいう学習指導要領)の中に正規の科目としてメディア・リテラシー
を位置付ける動きが世界的に強まったという指摘がありました。
 こうした情勢下でのメディア・リテラシー教育の世界分布に関して、国家
的カリキュラムへの位置付けを積極的に行っているカナダやオーストラリア
を「国家型」、メディア・リテラシー発祥の国でありながら1980年代以降進
展がなく最近になって新たな動きを見せる英国を「改革型」、台湾・香港・
日本など東アジア諸国および中南米を「後発型」、とするソフィアさんの類
型化は非常に明快で、特に後発型の中に地域・文化事情や教育事情が異なる
国々が多く混在することを考えると、今後の日本における展開を考える上で
興味をそそられる分析でした。
 さらに「WHAT? メディアについて何を学ぶのか」に関する理論構築や
コア概念、ソフィアさん独自のオーディエンスに関する分析枠組みの紹介、
ソフィアさんが制作に深く関わられた台湾のメディア・リテラシー教育番組
「甘く見ないで」(別小看我)の上映(絶賛!)などもあり、佳境に入った
ところで、残念ながら前編は幕切れ。東アジア独自のメディア・リテラシー
の展開を考える「HOW」の部分は後編に持ち越されることとなりました。
次回11月公開研究会はその後編となります。どうぞご期待ください。

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