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メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育(後編) mell公開研究会2005.11
河西由美子/2005.12

「メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育:イギリス、カナダ、オーストラリア、台湾の比較文化的検討を通じて」(後編)

11月公開研究会は、台湾政治大學媒体素養研究中心のソフィア・ウーさん
による「メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育:イギリス、カ
ナダ、オーストラリア、台湾の比較文化的検討を通じて」の後編をおこな
いました。
ユーモアと鋭い示唆を交えたソフィアさんのお話に会場はわき、参加者から
は活発な質問も飛び交って活気ある会となりました。

2005年11月メルプロジェクト公開研究会 報告

 日 時 2005年11月26日(土)午後2:00〜5:30
 場 所 東京大学本郷キャンパス情報学環アネックス2F会議室
 参加者 約40名
 テーマ 「メディアをめぐる知識とメディアリテラシー教育:
      イギリス、カナダ、オーストラリア、台湾の比較文化的
      検討を通じて」(後編)
 登壇者 報告  ソフィア・ウー=呉翠珍(台湾政治大學伝播學院
         媒体素養研究室・吉田秀雄記念事業財団客員研究員)
 通訳・解説   劉雪雁(国際通信経済研究所)
 コメンテーター 水越伸(東京大学大学院情報学環)
 モデレーター  河西由美子(玉川大学)

□ 10月の公開研究会で大好評だったソフィア・ウーさんによる、
比較文化的な見地に立ったメディア・リテラシー論の後編です。
 前編では欧米諸国のメディア・リテラシーの歴史的展開や、メディ
アリテラシー教育の世界的分布などを踏まえつつ、「WHY? なぜメ
ディアを学ぶのか」、「WHAT? メディアについて何を学ぶのか」
という根本的な2点について論じていただきましたが、今回は各国・
地域におけるメディア・リテラシー教育の実態から、「HOW? い
かにしてメディアを学ぶのか、その知識観とは」というテーマで講
義が展開されました。
 前編の「もみじ現象」に引き続き、後編の講義の導入は、日本の
皇室報道についての分析でした。「なぜ結婚前のプリンセスの写真
はすべて何かを『仰ぎ見る』構図なのか」という問題提起のもと、
例示されたいくつかの写真は、林の中や樹の枝の下で何かを「仰ぎ
見る」宮様の写真。ここまでは尋常なメディア観察・批評の範疇な
のですが、それを軽やかに体現されるところがソフィアさんの真骨
頂です。一連の写真の最後に発表されたのは、ソフィアさんご自身
が林の中をそぞろ歩きつつ、何かを「仰ぎ見」ている1枚。会場は
爆笑の渦に呑まれ、いつもながらのユーモラスかつしたたかで懐の
深いソフィアさんワールドに引き込まれました。
 講義は、英国、カナダ、オーストラリア各国のそれぞれの社会文
化的状況とメディア・リテラシー/メディア教育の成立の関係につ
いての概論から始まり、続いて台湾のメディア・リテラシー教育発
展の経緯と現状、最後にメディア・リテラシー教育の知識観につい
て言及されました。台湾の事例においては、1949年から1988年ま
での長期にわたる戒厳令下でのメディア統制とその後の解放、とい
う台湾の政治的社会的状況が説明され、その後現在までに台湾全土
の87%に普及したケーブルテレビ局の乱立(現在120局に及ぶ)と、
その結果としての視聴率獲得のためのなりふり構わぬ競争・競合に
よる番組内容の質の低下、相対的な公共放送の脆弱化といった台湾
固有の問題点が紹介されました。
 こうしたメディア状況に対抗するためのメディア・リテラシー教
育が内包する知識の特質をソフィアさんは、1)実践的なもの、
2)文化的背景と密接に関わるもの、3)定式化した回答を得るた
めのものではなく、オープンエンドな問いに導くもの、とし、社会
に存在するメディアの様態を所与のもの、自然発生的なものではな
く、構成されたものとして見る1970年代以降の批判理論をバック
ボーンとしていることを指摘されました。
 同時に主体的批判的な学習におけるメディア実践の意味とは、無
目的な単なる制作活動や操作技術の習得に留まるべきものではなく、
教育による民主化の実現であるとしつつ、「対話ワークショップ」
(2004年度)に代表される多くのメルプロジェクトの実践を、伝
統的な学生や教師の役割を脱構築しつつ協同的に実践を行うという
点で、いまや単なる学習方法を超え、メディア・リテラシーにおけ
る新しい知識の構成要素たるコミュニケーション・デザインの可能
性を志向するものと示唆されました。
 ソフィアさんの講演を受けて水越氏は、台湾をはじめとした他地
域の状況と引き比べたときに初めて私たちは、日本独自のきわめて
整然とシステム化されたメディア環境に気づくことができるとし、
台湾や欧米諸国のメディア・リテラシーが教育制度の中へ組み込ま
れることを通して発展してきたのに対し、MELLが日本のメディ
ア状況の中でまず目指したのは、教育としての制度化以前に、固定
したこのシステムへ揺さぶりをかけることだったのではないか、結
果としてMELLの実践の多くが独自の表現活動によって既存のメ
ディア組織と対峙してきたことは日本における必然ではなかったか
と分析されました。
 前編に続いて台湾のメディア・リテラシー教育番組『別小看我
(甘く見ないで)』の上映(今回は台湾で展開しているコカ・コー
ラ社の「Qoo」というキャラクター商品の販売戦略に関する内容)
もあり、講演後は参加者との間で活発な質疑応答が行われました。
 前・後編の2回を通じ、来春のメルプロジェクト・シンポジウ
ムにおける「メディア・リテラシーの東京宣言」への期待を抱か
せてくれる台湾からの報告でした。

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