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メルプロジェクトの相貌(2)メディアを拓く mell公開研究会2005.6
中村豊/2005.9

「メルプロジェクトの相貌(2)メディアを拓く・他者を理解する」

梅雨入りが遅れた今夏、東京では6月中旬のこの日はからりときれいに晴れ上
がりました。おかげさまで公開研究会は大盛況を迎え、この会のテーマ「アイ
デンティティ=identity、イメージ/出会う=image/encounter:メディアに
よってつくられた国や地域、他者のイメージを超えた出会いの可能性を追求す
る営み」をめぐって交わされた議論また、青空を突き抜くような示唆に富んだ
ものでした。

2005年6月メルプロジェクト公開研究会 報告

 日 時 2005年6月18日(土)午後3:00〜7:00
 場 所 東京大学本郷キャンパス情報学環アネックス2F会議室
 参加者 約90名
 テーマ 「メルプロジェクトの相貌(2)
             メディアを拓く・他者を理解する」
 登壇者 報告: 坂田邦子(東北大学)
         崔銀姫(北海道東海大学)
         ペク・ソンス(神田外国語大学)
         劉雪雁(国際通信経済研究所)
 コメンテーター:岩渕功一(早稲田大学) 
         隈元信一(朝日新聞社)
 モデレーター :北村順生(新潟大学)

□ メルプロジェクトの4年間の活動を振り返り、総括する最終年度の公開研
究会、「メルプロジェクトの相貌」シリーズの第2回目。今回はモデレーター
の北村順生さん(新潟大学)の進行のもと、「メディアを拓く・他者を理解す
る」をテーマとして4人のメンバーから報告が行われ、岩淵功一さんと、隈元
信一さんのお二人をコメンテーターにお迎えしました。
 まず最初は、劉雪雁さんから「第一期民放連プロジェクト」の福岡実践
(2002年度)について、福岡と台北の小学生によるイメージ・コラージュや
ビデオ制作を通じた交流の様子が報告され、イメージがメディアによって構成
されたものであると同時に、「自分たちのことが他者に<知られていない>こ
と」に気付く過程が説明されました。崔銀姫さんは、遠くはなれた二者がイメ
ージマップやクイズ形式のビデオ制作を通して交流する「アジアの不思議プロ
ジェクト」(2001年度〜継続中)を紹介。ローカル地域間におけるイメージ
の空白を顕在化させ、相互に交流する試みが報告され、特にステレオタイプの
問題が指摘されました。
 続いて、ペク・ソンスさんから「d'CATCHプロジェクト」(2002年度〜継
続中)について、メディア教育と異文化交流を交錯させたフィリピン、タイと
日本の学生による映像制作プロジェクトの報告がなされ、特に学生たちに生じ
た自己と他者の意識化の循環作用が述べられました。最後は、坂田邦子さんか
ら「メディア・他者・異文化」と題して上記3つのプロジェクトを総括する形
で、各国における映像文化が歴史的、文化的に身体感覚として埋め込まれてい
ること、また他者との関係性を脱/再構築する試みとしての「出会い」のデザ
イン、そして文化的実践としてのメディアリテラシーについて報告が行われま
した。
 以上の報告に対して、岩渕さんからは「ステレオタイプの再生産」の危険性
が指摘され、<自己と他者>、<オルタナティブ>といった「正解のない」問
いについて、思考と実践を続けるためにも、実践とともに理論が重要だという
コメントをいただきました。また隈元さんからは、「異文化接触」とは新聞記
者の職業にも通じるもので、新聞紙上に連載執筆された「韓流」を例として、
個々の出会いの大切さ、個々人に内在する複数性の葛藤の重要さについてコメ
ントをいただきました。
 研究会の最後には、こうした報告とコメントを受け、理論と実践の関係につ
いて、ステレオタイプについて、自己と他者を実定することの問題についてな
ど、会場を交えての議論が行われました。上記の論点に加えて、今回の議論か
ら浮かび上がったのは、メディアというものが様々な境界を更に強固に規定す
る一方で、その境界線を揺るがせ、さらにはそれを「越境」する可能性を秘め
たものであるという点ではないかと思います。
 我々自身の意識や身体、また自己と他者との関係性がメディアに規定されて
いることを自覚的に問い直し、その上で様々な"encounter"を通して
"identity"を再考し、より豊かな"image"の力を活用していくような実践が、
今後も続くことを期待しています。

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